世界の趨勢を決める戦争があった。
正義を騙る強国は、ひたすらに敵を追い立てる。
継続して、徹底的に、容赦なく攻め抜いた。
やがて、戦争も終結に向かうかと思われた頃のことである。
劣勢の立場に置かれた国は、形勢の逆転を狙い、ある計画に着手した。
それはPSY能力の人為的な開発、組織化を目指して極秘裏に進められた。
近代兵器に頼らぬ戦術様式の確立、戦闘状況における最前線への投入を画策した矢継ぎ早の立案であった。
余りにも荒唐無稽なその計画は、だがしかし、窮状の度合いに呼応して説得力を増していった。
『能力者』による戦争の継続と、その先にある勝利という名の代価を求めて。
しかしその願望が満たされることはなく、戦争は静かに終わりを告げる。
ついぞ『能力者』の実戦投入が行われることはなく、進捗も不明のまま、計画は密かに闇へと葬られた。
歴史の表舞台に顕れぬその計画は、砂漠に霞む蜃気楼の如く、その形を失う――

はずだった。
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第一部 「渇望編」